副業を始めて2か月。最初の2週間は毎日手を動かしていたのに、いまは開いてすらいない。多くの人が同じところで止まります。そして、止まった理由を自分の意志の弱さに求めます。
しかし、止まる原因のほとんどは始めるまでの手数の多さと、そもそも使える時間を数えていないことにあります。どちらも段取りの問題なので、直せます。この記事では、公的な調査で副業の実態を確認したうえで、本業側の制度の確認、時間の数え方、再開しやすい区切り方を順に整理します。
副業をしている人は、始めたい人よりずっと少ない
総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」(調査期日は令和4年10月1日)によると、非農林業従事者のうち副業がある者は305万人で、5年前に比べ60万人増加しています。一方、いま就いている仕事を続けながら他の仕事もしたいと思っている「追加就業希望者」は493万人で、5年前に比べ93万人増えています。
希望する人のほうが、実際にやっている人よりおよそ190万人多い。この差がそのまま、「始めたが続かなかった」「始められていない」人の層です。副業が続かないのは特殊な状態ではなく、多数派の状態だと考えたほうが正確です。
同じ調査では、本業がフリーランス(実店舗がなく、雇人もいない自営業主または一人社長で、その仕事で収入を得る者)の数は209万人で、有業者に占める割合は3.1%とされています。副業から入って事業として成立させている人は、確かに存在します。
先に確認すること:勤務先の規則と労働時間の通算
段取りの前に、確認しておかないと後戻りになる項目があります。
勤務先の就業規則です。 副業を届出制や許可制にしている会社は多く、始めてから判明すると、続ける以前の問題になります。まず規則を読んでください。
労働時間の通算の考え方も押さえておく必要があります。 厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は平成30年1月に策定され、令和2年9月と令和4年7月に改定されています。同ガイドラインでは、副業・兼業の場合における労働時間の通算について、労働基準法第38条第1項の解釈として考え方が示されています。雇用契約で副業をする場合、本業と副業の労働時間は通算して扱われる場面があるということです。
あわせて、長時間労働で健康を損なわないよう、過重労働を防止し健康確保を図ることが重要とされています。厚生労働省は、労働者が自分で本業と副業の労働時間や健康状態を管理できる「マルチジョブ健康管理ツール」も公開しています。
雇用ではなく業務委託で受ける副業であれば労働時間の通算の対象にはなりませんが、体力の総量が増えるわけではない点は同じです。
使える時間を、希望ではなく実績で数える
続かない人の多くは、使える時間を数えていません。数えていないので、「毎日1時間」という計画を立て、実際には週に2日しか取れず、計画から外れた時点で全体が崩れます。
数え方は単純です。直近2週間の実績で、副業に充てられた時間を日ごとに書き出してください。予定ではなく実績です。そのうえで、次の3つを見ます。
| 見るもの | 判断 |
|---|---|
| 1回あたりの最短時間 | いちばん短かった日でも確保できた時間が、計画の単位になる |
| 週あたりの回数 | 0の週があるなら、その週に何が起きたかを確認する |
| 崩れた日の理由 | 残業・体調・家庭の予定のどれが多いかで、打ち手が変わる |
ここで出てくる数字は、たいてい想定より小さくなります。小さい数字に合わせて計画を作り直すことが、続けるための最初の一歩です。「1日1時間」が取れないなら「20分×週4回」に落とす。落とした計画のほうが、実行されるぶん成果は大きくなります。
週末にまとめてやる形が崩れやすいのも、この数え方で説明できます。週末に予定が1つ入れば、その週の作業はゼロです。回数が少ないほど、1回の欠損が全体に効きます。加えて、間隔が空くほど「前回どこまでやったか」を思い出す時間が毎回かかります。
始めるまでの手数を減らす
取りかかれない日の中身を分解すると、実際の作業の前に、いくつもの小さな作業が挟まっています。
- 何をやるかを決める
- 前回どこで止まったかを探す
- 必要なファイルや資料を開く
- 作業できる場所と道具を用意する
疲れている日に脱落するのは、この前半部分です。ここを削ります。
次にやることを、前回の終わりに書いておく。 作業を終えるとき、「次はここから」を1行だけ残します。これがあるだけで、次回の立ち上がりが変わります。
決める回数を減らす。 曜日・時間・場所を固定すると、「いつやるか」を毎回決めなくて済みます。決める作業も作業です。
開くまでの手数を1つにする。 作業用のファイルやツールをすぐ開ける場所に置いておく。細かいようですが、手数が3つあると、疲れた日には開きません。
すでにある習慣に紐づける。 朝の通勤前、昼休みの後半、子どもが寝たあとなど、すでに毎日発生している時間の直後に置くと、思い出す必要がなくなります。
これらはどれも、やる気を上げる工夫ではありません。やる気が低い日でも成立するように、必要な手数を減らす工夫です。副業で作っているのが受注の入口なら、自分が動いていない時間にも問い合わせが入る導線の考え方と同じで、自分の調子に依存する部分を減らすほど安定します。
成果が出る前にやめないための区切り方
もう一つの離脱理由が、「やってみたが成果が出ない」です。ここで効くのは、期間ではなく量で区切ることです。
「3か月やってみる」という区切りは、途中で手が止まっても時間だけ過ぎるため、判断材料になりません。「提案を30件出す」「記事を20本書く」のように、自分の手で動かせる量で区切ると、期限が来たときに次の判断ができます。
- 決めた量をやり切っていない → 続けるか、時間の取り方を変える
- やり切ったが成果が出ない → 中身か、売る相手を変える
この切り分けができないまま「向いていなかった」と結論を出すと、次に何を変えればよいかが残りません。
やり切った後で中身を変えるときは、作業の手順そのものを書き出しておくと早く回せます。手順に落ちているものは改良できますが、頭の中にしかないものは前回との差が分かりません。この書き出し方は業務標準化マニュアルの作り方で整理しています。
お金の区切りを最初に作る
続いてきた副業は、どこかで税金の話になります。先に区切りを作っておくと、後から慌てずに済みます。
国税庁によると、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合、給与所得と退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は、確定申告が必要です。給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額との合計額が20万円を超えるかどうかで判断します。なお、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人は、金額にかかわらず確定申告が必要です。
この金額は「売上」ではなく「所得」で見ます。経費を差し引いた後の金額なので、いくら経費がかかったかを記録していないと判断できません。始めた月から、入金と支出を分けて記録しておいてください。
記録を残すと、副業を続けるかどうかの判断にも使えます。かけた時間と残った金額が並ぶと、時給に換算した現在地が見えます。事業として伸ばすつもりなら、生活費と事業のお金を分ける段階が次に来ます。その手順は生活費と事業資金を分けるで整理しています。
つまずきやすいところ
本業が忙しい時期の扱いを決めていない
繁忙期は必ず来ます。そこで「今週はできなかった」が続くと、そのまま止まります。あらかじめ、忙しい週の最低ラインを決めておいてください。10分だけ開いて次にやることを書き換える、でも構いません。ゼロにしないことが目的です。
成果の出る時期を短く見積もっている
最初の数か月は、作ったものが評価される前の期間です。その間の判断材料は成果ではなく、決めた量をこなせているかどうかしかありません。ここを混同すると、量が足りていないのに中身を変え続けることになります。
時間を増やす方向だけで解こうとする
睡眠を削って時間を作る形は、体調を崩した時点で全部止まります。厚生労働省のガイドラインでも、副業・兼業を進めるうえで過重労働の防止と健康確保が重要とされています。増やす前に、始めるまでの手数を削るほうが先です。
自分の稼働時間を売る形のまま広げようとする
時間で売る副業は、本業の残り時間が上限になります。上限に当たった後の設計は、腕を上げるほど現場から離れられなくなる構造と同じです。副業のうちから、手順に落として人に渡せる形を意識しておくと、後で作り直さずに済みます。
続ける力は性格ではなく、段取りの結果です。使える時間を実績で数え、その数字に合わせて計画を作り、始めるまでの手数を削る。そのうえで、期間ではなく量で区切って判断する。順番はこれだけです。



